2009年02月26日
豊かな体験活動のまとめ
1 取り組みの概要
(1) 実施目的
① 経験の少ない農業体験・酪農体験を通して働くことの意義、食育の大切さ、教育特区の趣旨を生かした伝統文化・食文 化などについて学ばせたい。
② 集団生活や受け入れ先の家庭、ボランティアの方々との交流を通して人間関係力の向上を図りたい。
③ 「早寝早起き朝ご飯」の規則正しい生活を通して、生活リズムの向上を図る。
④ 様々な体験や交流を通して、キャリア教育の場としたり、自分の将来設計を考えさせる機会としたい。
(2) 実施内容
① 期間 平成20年8月28日(木)~8月31日(日)
② 参加者 5・6年生 56名(5年18名、6年38名) 引率職員5名
ボランティア大学生(熊本大学6名、九州ルーテル学院大学4名)10名
③ 主に取り組む体験活動の種類など
ア ボランティア活動など社会奉仕に関わる体験活動
イ 自然に関わる体験活動(自然散策、山野草調査)
ウ 勤労生産に関わる体験活動(動物とのふれあい、酪農体験)
エ 職業・就業に関わる体験活動(キャリア教育としての勤労体験)
オ 文化や芸術に関わる体験活動(波野小との交流会)
カ 交流に関わる体験活動(民泊先家族、波野小児童など)
(3) 活動内容とねらい
活動ごとに、下記のようなねらいを持って計画し、活動した。
① 荻岳ハイキング
山野ハイキングを行い、鍛錬・協同して目的を達成する心を育み、山野草の植生や名前を覚えることで、熊本の豊かな自然を体感する。
② 伝統文化・伝統食づくり体験
教育特区の伝統文化・食文化・食育の取り組みとして、和紙づくり、そば打ち、ピザ作り体験を行い、伝統文化・食に対する理解を深める。
③ 酪農体験
毎日飲んでいる牛乳がどのように生産されているかを理解すると共に、キャリア教育の場とする。
④ 農村ホームステイ体験
農村の日常の生活を体験して、農業や酪農の仕事を理解すると共に、民泊先の家族との交流を行う。規則正しい生活を通して、生活リズムの向上を図る。
(4) 児童に育みたい力
① 豊かな心と人間関係力・コミュニケーション力の向上
② 生活リズムの向上とあいさつなどの礼儀作法の習得
③ 食の大切さ・食文化に対する理解、関心を深める
Ⅱ 取り組みの実際
1 主な活動内容について
(1) 1日目(8月28日)の活動
① 波野小との交流会
当日が、波野小も前期後半のスタート日で、午前中で下校予定だったが、午後も5年生以上の子ども達を残していただき、交流会を実施することができた。まず初めに、各小学校の代表児童が、スライドを使いながら学校紹介を行った。その後、
波野小の神楽クラブの子ども達が「波野神楽」を披露してくれた。「柴引き」という場面では、小川小の5年生も参加させていただき、体験型のプログラムを楽しんでいた。小川小の児童は、初めて見る神楽の動きや演奏など、小川の「とこせい」「がめ」「獅子舞」等と比較しながら興味深く鑑賞していた。その後、小川小の6年生が、学校の文化祭で演じる「ソーラン節」を披露した。夏休みに入ってからの練習開始で、たった5回の練習だったが、交流会で発表するという目標があったので、子ども達は毎回一生懸命練習に取り組み、当日までに何とか踊りを完成させることができた。波野小も運動会でソーラン節を踊ったということであり、体を動かし共感しながら鑑賞していた。それぞれの学校の発表の後、小グループに分かれ、両校の子ども達の交歓会を行った。各自が作った名刺を交換し、小川小から持っていった小川特産の和菓子を食べながら自己紹介や交流を図った。
(2) 2日目(8月29日)の活動
① そば打ち体験
2日目の午後の活動は、「そば打ち体験」。全員が初めて体験するので、楽しみにしていた体験の1つである。(先述した通り、そばアレルギーの子どもは前夜にうどんの生地を完成させていた)まず初めに、道の駅「波野」のそば打ちの店の方々を講師として招き、そばやそばの打ち方の説明を聞いた。その後、小麦粉とそば粉を2:8の割合にした粉を混ぜる作業をした。み
んなでこね鉢に手を突っ込んで混ぜ始め、最初の食に関する体験活動がスタートした。次の工程は、混ぜた粉に水を継ぎ足しながらこねる作業である。少ない水分量で生地が上手にまとめるだろうかと心配していたが、プロのご指導で、見事なそばの生地ができた。3番目の工程は、生地に麺棒を押し当てて転がしながら伸ばし広げていく作業である。何回も方向を変えながら生地を少しずつ伸ばし、だんだんそばらしくなっていくと、うれしさ・喜びと共に、夢中になって、作業に集中していく様子が窺われた。4番目の工程は、写真④の、のばした麺を折りたたんで切る作業であった。こま板で押さえ、麺切り包丁で切っていった。ここまで来ると、まるで職人さんになった気分で作業を進めていた。写真⑤のように自分達が作り上げたそばに喜びと自信を持ったことが、その笑顔からも窺える。すべての作業が終わると、後片付けをして、食堂ですぐに茹で上げて、写真⑥のようにみんなで自分達が作ったそばを食べた。麺の太さはばらばらだったがが、初めてのそば打ち体験でそばを手作りし、それを食べた喜びで満足だったようだ。阿蘇の地産地消の食文化「そば」。それを食べるだけでなく、作るところから自分達で体験したことに大きな喜びと伝統食への感謝の念を感じることができたようである。
② ホームステイ(農家民泊)へ
この日の夜から、いよいよ子ども達が12軒の農家へ民泊となる。まずはやすらぎ交流館を出発する前に、グリーンストックの諸岡さんからホームステイについてのオリエンテーションがあった。方、やすらぎ交流館を出発し、民泊する農家の方々が待っておられる所へバスで向かった。お世話になる阿蘇市の手野地区では、ホームステイ先の農家の方々が、それぞれの家の名前を書いたプラカードを持って出迎えてくださった。孫の里帰りのようなとても温かい雰囲気での出迎えに、子ども達の緊張もほぐれたようである。対面式では、ホストファミリーごとの顔合わせとミニ交流。代表児童による民泊農家の方々へのあいさつ、そして学校長によるホストファミリーの方々へのあいさつという流れで対面式を終えた。その後、子ども達は12軒の農家の方々に連れられ、それぞれの家へと向かった。ホームステイで、女児1名が熱を出し、養護教諭が近くの病院へでの受診のために引率した。また、夜中にも1人の男児が頭痛と熱発したとの連絡が、大学生ボランティアより職員の宿舎へ電話があり、養護教諭が対応し、回復した。
(3) 3日目(8月30日)の活動
① 酪農作業体験
3日目は、子ども達の民泊先である手野地区をバスで出発し、西原村にある「山田牧場」へ酪農体験をするために出かけた。まず初めに、山田牧場の方から牧場の紹介や酪農についてや当日の行動予定について説明を聞いた。その後、いよいよ酪農体験の開始。初めは、全員が搾乳体験(下写真②)を行った。自分の何倍もある大きな牛に近づき、おそるおそる牛に手を伸ばす子ども達。職員の方が牛の足を押さえていても、恐くて近寄るのに時間が掛かる子どももいたが、なんとか全員が搾乳を行うことができた。子ども達は、搾りながら牛乳をなめ、「甘い」「温かい」を連発していた。 その後、グループごとに分かれての酪農作業を体験した。牛舎清掃、子牛への哺乳体験、えさの配合体験、牛へのえさやりなど、毎日の給食で飲んでいる牛乳が多くの工程や作業を経て生産されていることを体感することができた。また、えさの配合体験では、バケツリレーでえさを手渡しながら作業していき、楽しみながら活動していた。えさには、豆腐のおから、醤油の絞りかすなどが再利用されていることも学習した。作業を終えて昼食後、搾りたての牛乳をペットボトルに入れて振って固める方法で、無添加のバターづくりを体験した。これは、ホストファミリーへのおみやげとなった。その後、グループ対抗で酪農に関するクイズ大会があり、初めて知る酪農の情報に、みんな驚きながら熱心に手を挙げたり、メモを取ったりしていた。酪農体験やクイズなどを終え、作業のご褒美として、牧場特製の無添加のソフトクリームをいただき、砂糖を使っていないのにとても甘くておいしい味に感動していた。最後に、代表児童がお礼の言葉を述べ、山田牧場を後にした。今回、牧場で酪農作業の一部を体験したが、普段何気なく口にしている牛乳の生産工程の大変さを体感することができた。また、牛乳から製造されるバターづくりや、商品となっているソフトクリームを試食するなど、生産から加工までを学ぶことができた。阿蘇の酪農産業、ここに来ないと体験できないことにチャレンジした喜びなどが、子ども達の感想文の一部にも表れている。
(4) 4日目(8月31日)の活動
① ピザ作り体験
最終日の午後は、やすらぎ交流館でのピザ作り体験であった。やすらぎ交流館の館長望月さんの指導で実施した。初めに、小麦粉をこねて生地を作る作業を行ったが、そば打ち・うどん打ちの経験を生かして、要領よく行うことができた。生地を寝かせる間に、阿蘇で穫れたピーマン・トマト・タマネギなどの野菜を切った。野菜を切り終えてから、寝かせておいた生地を麺棒で伸ばして広げ、ピザの1人分の大きさにする作業を行った。ピザソースをぬり、その上に先ほど切った阿蘇の野菜をそれぞれの好みでのせて下ごしらえ完成。そして、やすらぎ交流館の石窯で焼いて完成。普段冷凍食品としてや店などで食するだけのピザであるが、地元で穫れた小麦粉ととりたての野菜などを使い、自分達で初めから完成まで調理して食べるピザに大満足な様子で、野菜嫌いな子も喜んで食べていた。阿蘇の小麦粉を使って生地を作り、阿蘇でとれた地元の野菜をのせて焼いた地産地消のピザ。それを自分達で調理して食べるという体験がとても楽しく、市販のピザよりおいしく感じたようで、野菜嫌いな子ども達も喜んで食べていた。改めて子ども達は、食の楽しさと大切さを実感した。
Ⅲ 本事業の成果及び課題
1 「活動内容とねらい」に対する達成状況
(1)荻岳ハイキング、自然散策
山野ハイキングを行い、鍛錬・協同して目的を達成する心を育み、山野草の植生や名前を覚えることで、熊本の豊かな自然を体感する。鍛錬的な目的と自然散策が目的であったが、植物カードを手に精力的に山野草の調査をしていた。山頂には、グループがお互いに励まし合いながら登ることができた。
(2)伝統文化・伝統食づくり体験
教育特区の伝統文化・食文化・食育の取り組みとして、和紙づくり、そば打ち、ピザ作り体験を行い、伝統文化・食に対する理解を深める。本校では、総合的な学習の時間で、年間を通して食について学ぶが、今回の経験を出発点として大きな効果を上げた。11月の中間発表や3月の最終発表に向けて意欲的に取り組むことができる。
(3)酪農体験
毎日飲んでいる牛乳がどのように作られているかを理解すると共に、キャリア教育の場とする。牧場独自の臭いにためらっていた児童も、だんだん慣れてきて、子牛の世話や牛舎の清掃、餌の配合や餌やりなどに一生懸命に取り組み、牛乳の生産過程を理解し、生産者に対する感謝の気持ちを表現することができた。
(4)農村ホームステイ体験
農村の日常の生活を体験して、農業や酪農の仕事を理解すると共に、ホームステイ先の家族との交流を行う。規則正しい生活を通して、生活リズムの向上を図る。我が家の生活とホームステイ先の生活を比較することで、これまでの自分の生活を見直すことができた。酪農家の牛や山羊、鶏を飼育し、畑から野菜や果物を収穫し、食事をする地産地消の豊かなくらしを体験することができた。
2 児童に育みたい力とその成果
「児童に育みたい力」に対する本事業を通した成果をまとめると、以下のような状況である。
(1)豊かな心と人間関係力・コミュニケーション力の向上
波野小学校児童との交流、ホームステイ先との交流、大学生ボランティアとの共同生活、児童間の協力・共同作業などを通して、人間関係力やコミュニケーション能力は大きく向上した。生活リズムの向上とあいさつなどの礼儀作法の習得 早寝・早起き・朝ご飯、ホームステイ先のお手伝いなどはよくできた。活動先のたくさんの人々との出会いの中で、あいさつやお礼が自然に出るようになった。
(2)食の大切さ・食文化に対する理解、関心を深める
食物の栽培収穫・繁殖・肥育などの体験や理解、風土にあった食物と調理について理解することができた。保護者からは、食事に関心を示し、手伝うようになったという声があった。
3 関係団体との連携
(1) ホストファミリーとの連携
2泊を生活するホームステイ。どのような子ども達が行くのか知っていただくために、自己紹介カードを送付して事前に理解していただいていた。そのことで、スムーズに受け入れていただくことができ、子ども達もすぐにうち解けることができ、家族同然のように接していただいた。食事に関しても、アレルギーや好き嫌いを記入していたことで、とても配慮していただいたようである。その他、自家栽培の作物を使った料理や伝統郷土料理、家畜の世話などの体験、地元の史跡の案内、地元の温泉に連れて行っていただいたりなど、現地でしかできない食文化の体験や生活・風土を体感することができた。
(2) 大学生ボランティアとの連携
今回の取り組みにおいて、大学生ボランティアの存在はとても大きかった。10名が参加し、8つの行動班にそれぞれ分かれて行動を共にしてもらい、体験活動でも各班に分かれて子ども達と共に行動してくれた。ホームステイの際は、12軒に分かれたうちの10軒にそれぞれ入ってもらって一緒に寝食を共にして子ども達のお世話をしてくれた。
事前学習会で、顔合わせと共に、本事業の趣旨と活動して欲しい内容について話を、また、1泊目の夜に打合会を行って相互に意見交換をしたり、活動前に必要に応じて打合せを行った。そのことで、各グループの自主性を大切にした体験活動ができた。また、大学生との携帯電話連絡網を使って、民泊に分かれた後も、体調が悪くなった子どもがいたときなど、即座に連絡を取り合い迅速に対応できた。子どもとの年齢が近く、兄や姉のように子ども達の話を聞き、リーダーシップを発揮して諸活動で活躍してくれ、大学生ボランティアの本事業に置けるウエートはとても大きい。このような場に学生を派遣してくださった熊本大学・九州ルーテル学院大学にとても感謝している。
(3) グリーンストックとの連携
今回の3泊4日の体験学習を推進していただいた団体である。プログラ
ムの設定、宿舎確保・民泊農家の選定や交渉等々、学校とやりとりしながら計画立案をし、当日のサポートもしていただいた。
本校職員が事前の下見に行った時も同行して説明していただいたり、こちら側の要求に対してすぐに対応していただいた。今後、更に新しいプログラムの開発に取り組んでいただき、学校の多様なニーズに応えていただきたいと思う。
4 今後の課題
今回、2名が病院に行ったほか、体調を崩す子どもが多かった。そのことから考えて、以下の課題がある。
・実施時期の検討の必要性
・子どもが急病の場合への対応体制の整備(病院、休養場所の確保)、及び家庭との連携。(自宅から遠いため迎えが難しい)今年は初めての活動であったため、計画がほぼ任せっきりであったが、次年度からは、目標にあった活動となるよう受け入れセンターとの連携を密にしていきたい。
今年はモデル事業として予算が組まれ、食事代だけで実施できたが、助成がない場合にはプログラムをどのように変更するのか。また、今回は夏休み期間中だったので、大学生ボランティアが10名参加してくれたが、平日のサポートは難しい。
その他、「児童に育みたい力」の中でも、生活リズム向上や自立心の育成には、3泊4日の日程よりも、更に長期の計画が効果的である。その際、授業時数などの点から通学合宿や移動教室的な手法などを用いる計画の必要性がある。
(1) 実施目的
① 経験の少ない農業体験・酪農体験を通して働くことの意義、食育の大切さ、教育特区の趣旨を生かした伝統文化・食文 化などについて学ばせたい。
② 集団生活や受け入れ先の家庭、ボランティアの方々との交流を通して人間関係力の向上を図りたい。
③ 「早寝早起き朝ご飯」の規則正しい生活を通して、生活リズムの向上を図る。
④ 様々な体験や交流を通して、キャリア教育の場としたり、自分の将来設計を考えさせる機会としたい。
(2) 実施内容
① 期間 平成20年8月28日(木)~8月31日(日)
② 参加者 5・6年生 56名(5年18名、6年38名) 引率職員5名
ボランティア大学生(熊本大学6名、九州ルーテル学院大学4名)10名
③ 主に取り組む体験活動の種類など
ア ボランティア活動など社会奉仕に関わる体験活動
イ 自然に関わる体験活動(自然散策、山野草調査)
ウ 勤労生産に関わる体験活動(動物とのふれあい、酪農体験)
エ 職業・就業に関わる体験活動(キャリア教育としての勤労体験)
オ 文化や芸術に関わる体験活動(波野小との交流会)
カ 交流に関わる体験活動(民泊先家族、波野小児童など)
(3) 活動内容とねらい
活動ごとに、下記のようなねらいを持って計画し、活動した。
① 荻岳ハイキング
山野ハイキングを行い、鍛錬・協同して目的を達成する心を育み、山野草の植生や名前を覚えることで、熊本の豊かな自然を体感する。
② 伝統文化・伝統食づくり体験
教育特区の伝統文化・食文化・食育の取り組みとして、和紙づくり、そば打ち、ピザ作り体験を行い、伝統文化・食に対する理解を深める。
③ 酪農体験
毎日飲んでいる牛乳がどのように生産されているかを理解すると共に、キャリア教育の場とする。
④ 農村ホームステイ体験
農村の日常の生活を体験して、農業や酪農の仕事を理解すると共に、民泊先の家族との交流を行う。規則正しい生活を通して、生活リズムの向上を図る。
(4) 児童に育みたい力
① 豊かな心と人間関係力・コミュニケーション力の向上
② 生活リズムの向上とあいさつなどの礼儀作法の習得
③ 食の大切さ・食文化に対する理解、関心を深める
Ⅱ 取り組みの実際
1 主な活動内容について
(1) 1日目(8月28日)の活動
① 波野小との交流会
当日が、波野小も前期後半のスタート日で、午前中で下校予定だったが、午後も5年生以上の子ども達を残していただき、交流会を実施することができた。まず初めに、各小学校の代表児童が、スライドを使いながら学校紹介を行った。その後、
波野小の神楽クラブの子ども達が「波野神楽」を披露してくれた。「柴引き」という場面では、小川小の5年生も参加させていただき、体験型のプログラムを楽しんでいた。小川小の児童は、初めて見る神楽の動きや演奏など、小川の「とこせい」「がめ」「獅子舞」等と比較しながら興味深く鑑賞していた。その後、小川小の6年生が、学校の文化祭で演じる「ソーラン節」を披露した。夏休みに入ってからの練習開始で、たった5回の練習だったが、交流会で発表するという目標があったので、子ども達は毎回一生懸命練習に取り組み、当日までに何とか踊りを完成させることができた。波野小も運動会でソーラン節を踊ったということであり、体を動かし共感しながら鑑賞していた。それぞれの学校の発表の後、小グループに分かれ、両校の子ども達の交歓会を行った。各自が作った名刺を交換し、小川小から持っていった小川特産の和菓子を食べながら自己紹介や交流を図った。
(2) 2日目(8月29日)の活動
① そば打ち体験
2日目の午後の活動は、「そば打ち体験」。全員が初めて体験するので、楽しみにしていた体験の1つである。(先述した通り、そばアレルギーの子どもは前夜にうどんの生地を完成させていた)まず初めに、道の駅「波野」のそば打ちの店の方々を講師として招き、そばやそばの打ち方の説明を聞いた。その後、小麦粉とそば粉を2:8の割合にした粉を混ぜる作業をした。み
んなでこね鉢に手を突っ込んで混ぜ始め、最初の食に関する体験活動がスタートした。次の工程は、混ぜた粉に水を継ぎ足しながらこねる作業である。少ない水分量で生地が上手にまとめるだろうかと心配していたが、プロのご指導で、見事なそばの生地ができた。3番目の工程は、生地に麺棒を押し当てて転がしながら伸ばし広げていく作業である。何回も方向を変えながら生地を少しずつ伸ばし、だんだんそばらしくなっていくと、うれしさ・喜びと共に、夢中になって、作業に集中していく様子が窺われた。4番目の工程は、写真④の、のばした麺を折りたたんで切る作業であった。こま板で押さえ、麺切り包丁で切っていった。ここまで来ると、まるで職人さんになった気分で作業を進めていた。写真⑤のように自分達が作り上げたそばに喜びと自信を持ったことが、その笑顔からも窺える。すべての作業が終わると、後片付けをして、食堂ですぐに茹で上げて、写真⑥のようにみんなで自分達が作ったそばを食べた。麺の太さはばらばらだったがが、初めてのそば打ち体験でそばを手作りし、それを食べた喜びで満足だったようだ。阿蘇の地産地消の食文化「そば」。それを食べるだけでなく、作るところから自分達で体験したことに大きな喜びと伝統食への感謝の念を感じることができたようである。
② ホームステイ(農家民泊)へ
この日の夜から、いよいよ子ども達が12軒の農家へ民泊となる。まずはやすらぎ交流館を出発する前に、グリーンストックの諸岡さんからホームステイについてのオリエンテーションがあった。方、やすらぎ交流館を出発し、民泊する農家の方々が待っておられる所へバスで向かった。お世話になる阿蘇市の手野地区では、ホームステイ先の農家の方々が、それぞれの家の名前を書いたプラカードを持って出迎えてくださった。孫の里帰りのようなとても温かい雰囲気での出迎えに、子ども達の緊張もほぐれたようである。対面式では、ホストファミリーごとの顔合わせとミニ交流。代表児童による民泊農家の方々へのあいさつ、そして学校長によるホストファミリーの方々へのあいさつという流れで対面式を終えた。その後、子ども達は12軒の農家の方々に連れられ、それぞれの家へと向かった。ホームステイで、女児1名が熱を出し、養護教諭が近くの病院へでの受診のために引率した。また、夜中にも1人の男児が頭痛と熱発したとの連絡が、大学生ボランティアより職員の宿舎へ電話があり、養護教諭が対応し、回復した。
(3) 3日目(8月30日)の活動
① 酪農作業体験
3日目は、子ども達の民泊先である手野地区をバスで出発し、西原村にある「山田牧場」へ酪農体験をするために出かけた。まず初めに、山田牧場の方から牧場の紹介や酪農についてや当日の行動予定について説明を聞いた。その後、いよいよ酪農体験の開始。初めは、全員が搾乳体験(下写真②)を行った。自分の何倍もある大きな牛に近づき、おそるおそる牛に手を伸ばす子ども達。職員の方が牛の足を押さえていても、恐くて近寄るのに時間が掛かる子どももいたが、なんとか全員が搾乳を行うことができた。子ども達は、搾りながら牛乳をなめ、「甘い」「温かい」を連発していた。 その後、グループごとに分かれての酪農作業を体験した。牛舎清掃、子牛への哺乳体験、えさの配合体験、牛へのえさやりなど、毎日の給食で飲んでいる牛乳が多くの工程や作業を経て生産されていることを体感することができた。また、えさの配合体験では、バケツリレーでえさを手渡しながら作業していき、楽しみながら活動していた。えさには、豆腐のおから、醤油の絞りかすなどが再利用されていることも学習した。作業を終えて昼食後、搾りたての牛乳をペットボトルに入れて振って固める方法で、無添加のバターづくりを体験した。これは、ホストファミリーへのおみやげとなった。その後、グループ対抗で酪農に関するクイズ大会があり、初めて知る酪農の情報に、みんな驚きながら熱心に手を挙げたり、メモを取ったりしていた。酪農体験やクイズなどを終え、作業のご褒美として、牧場特製の無添加のソフトクリームをいただき、砂糖を使っていないのにとても甘くておいしい味に感動していた。最後に、代表児童がお礼の言葉を述べ、山田牧場を後にした。今回、牧場で酪農作業の一部を体験したが、普段何気なく口にしている牛乳の生産工程の大変さを体感することができた。また、牛乳から製造されるバターづくりや、商品となっているソフトクリームを試食するなど、生産から加工までを学ぶことができた。阿蘇の酪農産業、ここに来ないと体験できないことにチャレンジした喜びなどが、子ども達の感想文の一部にも表れている。
(4) 4日目(8月31日)の活動
① ピザ作り体験
最終日の午後は、やすらぎ交流館でのピザ作り体験であった。やすらぎ交流館の館長望月さんの指導で実施した。初めに、小麦粉をこねて生地を作る作業を行ったが、そば打ち・うどん打ちの経験を生かして、要領よく行うことができた。生地を寝かせる間に、阿蘇で穫れたピーマン・トマト・タマネギなどの野菜を切った。野菜を切り終えてから、寝かせておいた生地を麺棒で伸ばして広げ、ピザの1人分の大きさにする作業を行った。ピザソースをぬり、その上に先ほど切った阿蘇の野菜をそれぞれの好みでのせて下ごしらえ完成。そして、やすらぎ交流館の石窯で焼いて完成。普段冷凍食品としてや店などで食するだけのピザであるが、地元で穫れた小麦粉ととりたての野菜などを使い、自分達で初めから完成まで調理して食べるピザに大満足な様子で、野菜嫌いな子も喜んで食べていた。阿蘇の小麦粉を使って生地を作り、阿蘇でとれた地元の野菜をのせて焼いた地産地消のピザ。それを自分達で調理して食べるという体験がとても楽しく、市販のピザよりおいしく感じたようで、野菜嫌いな子ども達も喜んで食べていた。改めて子ども達は、食の楽しさと大切さを実感した。
Ⅲ 本事業の成果及び課題
1 「活動内容とねらい」に対する達成状況
(1)荻岳ハイキング、自然散策
山野ハイキングを行い、鍛錬・協同して目的を達成する心を育み、山野草の植生や名前を覚えることで、熊本の豊かな自然を体感する。鍛錬的な目的と自然散策が目的であったが、植物カードを手に精力的に山野草の調査をしていた。山頂には、グループがお互いに励まし合いながら登ることができた。
(2)伝統文化・伝統食づくり体験
教育特区の伝統文化・食文化・食育の取り組みとして、和紙づくり、そば打ち、ピザ作り体験を行い、伝統文化・食に対する理解を深める。本校では、総合的な学習の時間で、年間を通して食について学ぶが、今回の経験を出発点として大きな効果を上げた。11月の中間発表や3月の最終発表に向けて意欲的に取り組むことができる。
(3)酪農体験
毎日飲んでいる牛乳がどのように作られているかを理解すると共に、キャリア教育の場とする。牧場独自の臭いにためらっていた児童も、だんだん慣れてきて、子牛の世話や牛舎の清掃、餌の配合や餌やりなどに一生懸命に取り組み、牛乳の生産過程を理解し、生産者に対する感謝の気持ちを表現することができた。
(4)農村ホームステイ体験
農村の日常の生活を体験して、農業や酪農の仕事を理解すると共に、ホームステイ先の家族との交流を行う。規則正しい生活を通して、生活リズムの向上を図る。我が家の生活とホームステイ先の生活を比較することで、これまでの自分の生活を見直すことができた。酪農家の牛や山羊、鶏を飼育し、畑から野菜や果物を収穫し、食事をする地産地消の豊かなくらしを体験することができた。
2 児童に育みたい力とその成果
「児童に育みたい力」に対する本事業を通した成果をまとめると、以下のような状況である。
(1)豊かな心と人間関係力・コミュニケーション力の向上
波野小学校児童との交流、ホームステイ先との交流、大学生ボランティアとの共同生活、児童間の協力・共同作業などを通して、人間関係力やコミュニケーション能力は大きく向上した。生活リズムの向上とあいさつなどの礼儀作法の習得 早寝・早起き・朝ご飯、ホームステイ先のお手伝いなどはよくできた。活動先のたくさんの人々との出会いの中で、あいさつやお礼が自然に出るようになった。
(2)食の大切さ・食文化に対する理解、関心を深める
食物の栽培収穫・繁殖・肥育などの体験や理解、風土にあった食物と調理について理解することができた。保護者からは、食事に関心を示し、手伝うようになったという声があった。
3 関係団体との連携
(1) ホストファミリーとの連携
2泊を生活するホームステイ。どのような子ども達が行くのか知っていただくために、自己紹介カードを送付して事前に理解していただいていた。そのことで、スムーズに受け入れていただくことができ、子ども達もすぐにうち解けることができ、家族同然のように接していただいた。食事に関しても、アレルギーや好き嫌いを記入していたことで、とても配慮していただいたようである。その他、自家栽培の作物を使った料理や伝統郷土料理、家畜の世話などの体験、地元の史跡の案内、地元の温泉に連れて行っていただいたりなど、現地でしかできない食文化の体験や生活・風土を体感することができた。
(2) 大学生ボランティアとの連携
今回の取り組みにおいて、大学生ボランティアの存在はとても大きかった。10名が参加し、8つの行動班にそれぞれ分かれて行動を共にしてもらい、体験活動でも各班に分かれて子ども達と共に行動してくれた。ホームステイの際は、12軒に分かれたうちの10軒にそれぞれ入ってもらって一緒に寝食を共にして子ども達のお世話をしてくれた。
事前学習会で、顔合わせと共に、本事業の趣旨と活動して欲しい内容について話を、また、1泊目の夜に打合会を行って相互に意見交換をしたり、活動前に必要に応じて打合せを行った。そのことで、各グループの自主性を大切にした体験活動ができた。また、大学生との携帯電話連絡網を使って、民泊に分かれた後も、体調が悪くなった子どもがいたときなど、即座に連絡を取り合い迅速に対応できた。子どもとの年齢が近く、兄や姉のように子ども達の話を聞き、リーダーシップを発揮して諸活動で活躍してくれ、大学生ボランティアの本事業に置けるウエートはとても大きい。このような場に学生を派遣してくださった熊本大学・九州ルーテル学院大学にとても感謝している。
(3) グリーンストックとの連携
今回の3泊4日の体験学習を推進していただいた団体である。プログラ
ムの設定、宿舎確保・民泊農家の選定や交渉等々、学校とやりとりしながら計画立案をし、当日のサポートもしていただいた。
本校職員が事前の下見に行った時も同行して説明していただいたり、こちら側の要求に対してすぐに対応していただいた。今後、更に新しいプログラムの開発に取り組んでいただき、学校の多様なニーズに応えていただきたいと思う。
4 今後の課題
今回、2名が病院に行ったほか、体調を崩す子どもが多かった。そのことから考えて、以下の課題がある。
・実施時期の検討の必要性
・子どもが急病の場合への対応体制の整備(病院、休養場所の確保)、及び家庭との連携。(自宅から遠いため迎えが難しい)今年は初めての活動であったため、計画がほぼ任せっきりであったが、次年度からは、目標にあった活動となるよう受け入れセンターとの連携を密にしていきたい。
今年はモデル事業として予算が組まれ、食事代だけで実施できたが、助成がない場合にはプログラムをどのように変更するのか。また、今回は夏休み期間中だったので、大学生ボランティアが10名参加してくれたが、平日のサポートは難しい。
その他、「児童に育みたい力」の中でも、生活リズム向上や自立心の育成には、3泊4日の日程よりも、更に長期の計画が効果的である。その際、授業時数などの点から通学合宿や移動教室的な手法などを用いる計画の必要性がある。